幼いお子さんとおうち英語をしていて、英語力の維持向上における読みの大切さを説かれたり、すでに読んでいる子を見ると、「読み」をいつから始めるべきか、疑問や焦りが出てくることもあるのではないでしょうか。
3歳の子と暮らす私もそんなそわそわの真っ最中です。
おうち英語の先輩に相談したところ、「息子くん側の読む準備はできているの?」と“Reading Readiness“という概念を教えてもらいました。読書の準備ができてきたサインを子どもが出してくれているそうなんです!
・Reading Readinessとは何か?
・何を観察するべきか?
・そして子どものわくわくするような読書体験のために何ができるのか?
情報をまとめてみました。
Reading Readinessとは?
そもそもReading Readinessとは何でしょう?
Reading readiness has been defined as the point at which a person is ready to learn to read and the time during which a person transitions from being a non-reader into a reader.
Reading readiness in the United States – Wikipedia
Reading Readinessとは、「読み」を学ぶ準備ができた段階のこと、および、読めなかった人が読めるようになっていく期間のことを指します。(ざっくり意訳)
この段階は、子どもによって異なる時期にやってきて、4〜5歳までに読み方を学ぶ準備ができるかもしれませんし、6歳か7歳くらいに準備ができたと感じるかもしれません。急ぐことはありません。
英語の「読み」への準備度をはかるめやすになりますが、全てチェックマークをつける必要があるものでもありませんし、誰かと競うものでもありません。
あくまでも、子ども一人一人のReading Readinessを把握し、サポートすることが大切なのだそう!
Reading Readiness 5つの指標
Reading Readinessの指標も、いろんな分け方があるようですが、5つにわけて考えるのがわかりやすいなと思いました。
- 読書への意欲|Motivation to Read
- 活字と本の認識能力|Print and Book Awareness
- 文字の知識|Letter Knowledge
- 音韻認識能力|Phonological Awareness
- 聴解力|Listening Comprehension
繰り返しますが、ここに書くすべてのことが今すぐ完璧にできないと読めるようにならないわけではありません!焦らず読んでください。
この5つの指標について深掘りながら、子どもが出すサインと、取り組めることも一緒にまとめてみました!
①読書への意欲|Motivation to Read
「読書への意欲(Motivation to Read)」がある子は、自分から読みを学びたがっています。読書は楽しいものだと思っていて、自分も早くやりたいと考えています。
シンプルなことに思えますが、これをモチベーションがない子に読みを教えるのはなかなか大変です。
【読書への意欲】チェックポイント
- 本やお話を聞くことに興味がある
- 本、看板、ポスターなど、身の回りにある活字に気づき、何と書いてあるか興味を持つ
- 物語を作ったり、身の回りの出来事を熱心に話す
- 本を読むふりをする
- 文字を書く真似をする
- 物語の好きなところを覚えて、一緒に「読む」
- 自分の名前を書く、読む
【読書への意欲】取り組み
- 乳幼児期から絵本を読んであげる。本を愛情や安心と結びつけることができる
- 繰り返し読む。子どもは次に起こることを予期しながら読むのが好き
- 予想できるライミングがある本は、子どもに言わせてあげる
- お出かけをする。本を現実世界に結びつけると、読書は「冒険」になる。動物の本なら牧場や動物園へ。遠すぎるなら写真を。
- じっとしているのが苦手な子にとっても読み聞かせは大事。塗り絵、ねんど、レゴなどで手を動かせるようにしてあげる。しかけ絵本もおすすめ。
- 親自身も読む姿を見せる。娯楽としてでも、勉強としてでも、レシピでも
- 図書館に行ったり、家に本を置いたりして、本にふれる機会をつくる
- 子どもの目につき、手に取りやすい場所に本を置く
- 感情が伝わるように本を読む
- 本に出てくる韻を強調して本を読む
- いつも同じところで読んでいるなら、家の違う場所や、公園のベンチで読んでみたり、Reading Nookを作って特別な時間に
②活字と本の認識能力 |Print and Book Awareness
「活字と本の認識能力(Print and Book Awareness)」とは、ページ上の活字が意味を持ち、話し言葉に関連する言葉を表していることを理解すること、そして本の扱いに関して知識を持つことです。
【活字と本の認識能力】チェックポイント
- 本の持ち方を理解する(例:上下逆に渡した時に、正しい方向に回転させる)
- 本の前から後ろへ、ページをめくる方向を理解する
- 文字が左から右、上から下へと移動することを理解する(※英語の場合)
- 単語がスペースで区切られていることに気づき、単語の始まりと終わりを理解する
- ページ上にピリオドや感嘆符、疑問符などの特別な記号があることにも気づく
- 文章には意味があることを理解する
- 絵のような手がかりを使って、本の中の文章を理解することができる
【活字と本の認識能力】取り組み
- 一緒に読みながら、前から後ろ、左から右に読んでいることを強調する
- ページの最初の言葉を指差してもらう
- 子どもにページをめくらせる
- アルファベットを教える
- 一緒に表札をつくる
- 台所に一緒に立ち、食べ物のパッケージやレシピに書かれた言葉を知らせる
- 街中の標識や看板を読んであげる
③文字の知識|Letter Knowledge
「文字の知識(Letter Knowledge)」がある子どもは、大文字と小文字の両方のアルファベットをすべて認識し、それぞれの名前と音も知っています(Letter-Sound Correspondence)。
文字と音の対応関係をしっかり理解していないと、読み方を学ぶのに苦労します。
子どもはまず、単語の中の文字を見て、それぞれの文字に音をマッチングさせ、その音を混ぜて単語を読む必要があります。やがてこれが自動的に行われるようになり、読むことが流暢になるのです。
【文字の知識】チェックポイント
- Alphabet songが歌える
- 大文字(A-Z)がわかる
- 小文字(a-z)がわかる
- 本の表紙や看板など、身の回りにある文字に気づく
- 文字の代表的な音がわかる(B says /b/ and K says /k)
【文字の知識】取り組み
- Alphabet songを一緒に歌う
- 文字の名前とその音の関連付けを始める
- レゴや粘土でアルファベットを作ったり、砂文字版を触ったりして、文字を感じる
- 文字の名前と音を関連付けられるようにする。例えば、ピザの箱に書いてあるpizzaという文字を指さして、“We’re having pizza tonight. Pizza starts with P. P says /p/ as in pizza.”
- 文字がフォントによって違って見えること、印刷された文字と手書きの文字が違って見えることを教える
(特に小文字の a, g, q, t, y に苦戦する場合がある)
④音韻認識能力|Phonological Awareness
「音韻認識(Phonological Awareness)」とは、話し言葉に含まれる様々な音を聞き分け、識別する能力です。
音韻認識の力がついていると、韻を踏んだ遊びをしたり、言葉でゲームをすることができ、それにはフォニックス能力の発達が不可欠です。
遊びを通して、この要素の準備が整っているかどうかを判断することができます。
【音韻認識能力】チェックポイント
- 韻を踏む単語を答えられる
(例:batと聞いて、hat, sat, mat, flatとrhymeできる) - 単語の境目がわかる
(例:Don’t let the cat outという文を、5つの独立した単語に分けることができる) - 音節(syllables)に合わせて手を叩くことができる
(例:dogは1回、umbrellaは3回) - 音を混ぜて単語を作ることができる
(例:sh…eepという音を聞いて、sheepという単語をつくることができる) - 単語の最初の音がわかる
(例:pigの最初の音は /p/) - 単語の最後の音がわかる
(例:jamの最後の音は /m/)
【音韻認識能力】取り組み
- ライミング(韻)の多い絵本を読む
- ナーサリーライムを歌う
- 音節を数える遊びをする
- My puppy has long earsという文があれば、1ワード言うごとに積み木を積む
- /k/の音から始まる言葉を探すゲームをする
(“I’ve got my eye on something that starts with /k/. Go find it!”)
⑤聴解力|Listening Comprehension
「聴解力(Listening Comprehension)」とは、言われたことを聞き取るだけではなく、言葉を理解し、関連づけられる能力のことです。
読解力(Reading Comprehension)の、リスニング版ということですね。
この能力は赤ちゃんのころから育まれていき、低学年のうちは読解力より聴解力の方が高い傾向にあるため、より高いレベルの理解力をつけていくためには文字以外(読み聞かせ、ディスカッション、映画など)の情報源を活用することが大切です。
【聴解力】チェックポイント
- Retell: 物語を聞いたり、本を読んだりした後、ストーリーの中で起こった出来事について話す
- Retell: クラスメートから聞いた話や、先生と一緒に読んだ本などの内容を要約して話す
- Repeat: 読み聞かせされたものをリピートして読むことができる
【聴解力】取り組み
- Hedbanzという推理ゲームで遊ぶ。
(Am I an animal? Do I live in the water? Can I fly? Do I have legs? Am I bigger than a refrigerator?) - 親子の会話を通して語彙を増やす。単語の意味を聞かれたら、意味を説明しつつ、例えを出したり、対義語を一緒に考えたり、新しい単語を日常で繰り返し使ったりする
- 読み聞かせをしながら”What do you think will happen next?”と予想させる
- 物語の内容や、おもしろかった部分を他の家族に伝えるよう促す
- 親が読んだ短い文章を繰り返すように促す(簡単なものから)
- 一緒にオーディオブックを聞く。笑ったり、驚いたり、怖がったり、親がストーリーにリアクションをとる
Reading Readinessのスキルを把握できる「テスト」
ここまでもチェックポイントをまとめてきましたが、実際に子どものスキルの強み弱みを把握するには、公開されている「リーディング・レディネス・テスト」を使ってみるのがお手軽そう。
このあたりが使いやすそうで、遊びながらやってみたいです!
・読みを学び始める準備ができた発達段階にいる子どもは、これらのスキルを身につけることができるはず
・すべてに正解できなくても、読みの学習は可能
・子どもが何を知っていて、何に取り組むべきかの基準として役立てる
・どの部分に重点を置いてサポートすればよいかわかることが大事
とありました。
最初の「文のリピート」をする例文を見て、求められているレベル感がわかりやすかったです。「たしかに、日本語でこのくらいの内容はリピートできそうだな…英語だとまだ先だな…」とはっとしました。
反対語、色や形の名前、位置についての概念、認知スキルなど、このあたりも読みを始めるにあたってわかっていた方がいいのですね。
4歳向けの20問の質問で、読みの準備度を測ります。
「あなたの子どもはlettersが何か知っていますか?」と聞くのではなく、実際に4択の絵を見せて、「lettersが入っている絵を指差して」と聞いていくので、様々な概念が理解できているか、一瞬でわかりそうです。
印刷するのはマニュアルの方ですが、使う際はこちらのページを見て、やりかたを確認してみてくださいね。
Print Knowledge, Emergent Writing, Linguistic Awarenessと大きく3つにわけられていて、分野別のアクティビティ案もあるので、苦手だった項目があっても楽しく次のアクションにつなげられそう!
親の心構えは、「子どもが導く」。
親の心構えとしてこんな大事なことも書いてありました。
学習の旅は、子どもに導いてもらいましょう。子ども自身が船の船長になることを恐れないでください。
読書への興味を育てるのはマラソンであり、短距離走ではありません。一朝一夕にはいかないかもしれませんが、それでもいいのです。読書が楽しく、魅力的なものであるためには、子どものストレスレベルを下げることが一番です。一緒に本を読む時間を大切にしましょう。
魅力的でなくなったら、読書に興味を失ってしまうこともあるかもしれないですよね。プレッシャーをかけずに、楽しく促していくことを大事にしたいです。
我が家ではどうする?
Reading Readinessのチェックポイントを見ていくと、現状ではできないことの方が多いですが、できることもあるといううれしい発見がありました!
読書への意欲:△
活字と本の認識能力:△
文字の知識:△
音韻認識能力:?
聴解力:△
これも踏まえ、息子3歳1ヶ月の我が家の現時点での結論から書くと、
- 今は「読み」よりも「音のインプット」を積極的に取り組む
- 英語の本の読み聞かせを継続する
- フォニックスの歌や、ライミングでのゲームなど、音韻意識を楽しく高めていく
- 少しずつリピーティングを促してみる
このあたりを軸に、読みのための活動には重点を置かずにいこうかなと思っています。
(※子どもや私の状況によって、考えが変わる可能性あり)
- 我が家では「今すぐ」読み始める必要性はない。
- 耳の発達のピークを考えると、低年齢での耳からのインプットは、リスニングや発音にとても重要。
- 日本で暮らし、日本の保育園に通わせている我が家では、耳(音)からのインプット量が足りていない可能性が高い。
- 語彙力や使いこなせる英文量をふやしてから読みが始まった方が親の負担が軽そう。
ということで、「読み」に関しては、遊びの中で細々と取り組んでいき、時期がきたときにがっと読みを進めていこうかと思っています!
あくまで息子の様子を見たり、仮説を立てながらの我が家の方針なので、遠回りかもしれませんし、1ヶ月後に考えが変わっているかもしれません!笑
Reading Readinessを見極めながら、各ご家庭の状況、環境や性格などに合った、良い方向性が見つかりますように。